自転車の歴史
意外かもしれませんが自転車の歴史は200年と浅く、私たちが知る今の形になるまで試行錯誤されてきました。
最初に開発された自転車はどのようなものなのか、そしてどのように変わってきたのか気になる人も多いでしょう。
普段、何気なく乗りこなしている自転車も歴史を知ることで少し価値観が変わる良いきっかけになるかもしれません。
1817年、ドイツのカール・フォン・ドライス男爵が走りながら曲げられる足蹴り式の木製二輪車を発明し、1818年にフランスで特許を取りました。
これが自転車の始まりと言われています。
「ドライジーネ」という名前で特徴としてはペダルが付いておらず、地面を蹴って走っていました。
前と後ろには車輪が付いていて、その間にまたがる姿は現在と同じで、当時は貴族階級の遊びとして流行していたのです。
同じ1818年、イギリスのデニス・ジョンソンという人がハンドル付きで鉄製の二輪車を完成させました。サドルの部分だけ革張りで、胴体の先端には馬の頭の飾りが付いていました。馬頭飾りは当時の人々の乗馬生活の思いが込められていそうです。このドライジーネの改良型は「ホビーホース(おもちゃの馬)」とか「ダンディーホース(おしゃれな馬)」と呼ばれ大流行しました。
次に出現したのが1839年、イギリスの鍛冶屋カークパトリック・マクミランにより発明されたいわゆるマクミラン型です。鉄製の車輪で、前輪の直径が約81cm、後輪は約107cm。マクミラン型からは足蹴りの卒業です。ペダルはクランクで後輪に連動し、足を前後に往復させて動かす仕組みです。総重量は約26kgでこれにも馬頭飾りが付いていました。
1860~1861年、フランスのパリで乳母車・馬車職人をしていたピエール・ミショー親子がミショー型(ボーンシェーカー)を発明しました。
前輪にクランクとペダルを付けることで地面から足が離れ、より今の自転車の形に近付く形になりました。今の子供用三輪車にその痕跡が残っていますね。
ペダルが回転式となったことにより、力が車輪に直接伝わるためにスピードが出せるようになり、さらに初めてブレーキが装備されました。
この前輪駆動式、ブレーキ付きの新製品は最初の年に100台を量産し、4年後に400台を追加生産するほど売れたと伝えられています。
このころから自転車は一気に身近な存在となり、この頃からパリでレースが開催されるようになったのです。
ボーンシェイカーという言葉は「骨ゆすり」という意味ですが、この自転車はそんなに揺れが激しかったのでしょうか。「がたくり車」とも呼ばれていたそうです。
1870年頃にイギリスのジェイムズ・スターレーとスミス・ヒルマン(ウィリアム・ヒルマン)が前輪が極端に大きいオーディナリー型と呼ばれる自転車を発表しました。前輪が大きくすればスピードが増すという事実を知ったため、このような形になったようです。日本では「一輪半」とか「ダルマ自転車」と呼ばれました。
しかし、ここで問題が発生します。それは「重心が高いためにブレーキを掛けると前方宙返りしてしまう」ことです。また、サドルに乗るのも大変。
転倒事故が後を絶たず、ドイツの新聞には「旅行好きの災難」と皮肉った漫画が載っています。
オーディナリー型はフランスに変わりイギリスが主要生産国になりました。
ちなみにオーディナリーとは「普通」という意味ですが、前輪が大きすぎるのに「普通」とは解せないですね。前輪の直径が背丈を超えるものもあったらしいです・・・。
1879年、イギリスのハリー・J・ローソンが、歯車・チェーン駆動のセーフティ型を作り上げました。歯車同士の組み合わせにより、速くも遅くもできるのでもうオーディナリー型のように前輪をやたらに大きくする必要がなくなりました。
フランス語でビシクレット(二輪車)の名前が付けられ、これが英語の「Bicycle(バイシクル)」の由来だそうです。
1885年にはジェイムズ・スターレーの甥であるジョン・スターレー(ケンプ・スターレー)が安全性を考え前輪と後輪の大きさを均等にし、やっと現在の自転車の直接的な元祖(ローバー型安全自転車)として登場しました。さらにその翌年には獣医ダンロップが自転車用空気タイヤを発明。
20世紀になると自転車はどんどん進化し続け、今では目的に合わせていろいろな種類が選べるようになりました。
普段、何気なく乗りこなしている自転車ですが元を辿れば貴族たちの遊びものだったのです。
自転車の原点はドイツで誕生し、フランスで育成され、イギリスが世界に広めたのです。
以上、自転車の歴史でした。