半自動溶接でノズルが母材にくっつく!? 原因と対処法
半自動溶接中、ノズルが母材に触れた際に意図せずアークが発生し、「バチッ」とくっついてしまう経験はありませんか?
ノズルが当たった箇所が溶け、異臭がすることもあります。特に狭い場所での溶接や、ウィービング溶接時に起こりがちです。
通常、ノズルが母材に接触してもショートは起こりません。この現象が頻繁に発生する場合は、何らかの問題が考えられます。
本記事では、原因の特定が難しいこの現象の解決をサポートする情報をご紹介します。
ノズル接触でアークが発生してしまうときに考えられる原因と確認・対処法
原因を特定するためには、以下の項目を一つずつ確認していくことをお勧めします。手間がかからず、費用もかからないものから順番に確認していきましょう。
● 溶接機の電気設定を確認
まず、溶接機の電圧や電流設定が適切であるか確認しましょう。設定が高すぎるとアークが不安定になり、ノズルが触れた際に意図しないアークが発生しやすくなります。取扱説明書を確認し、溶接する母材やワイヤーに合った設定になっているか確認してください。
● トーチの角度、不安定な持ち方でないか
溶接中にトーチの角度が不安定だったり、持ち方が悪いと、意図せずノズルが母材に接触しやすくなります。安定した姿勢でトーチを持ち、一定の角度を保つように意識しましょう。
● アース不良
アースが適切に取れていないと、電流がスムーズに流れず、意図しない箇所でアークが発生することがあります。アースクリップが母材にしっかりと接続されているか確認し、接続部に汚れや錆がないか確認してください。
● ケーブルに損傷はないか
溶接ケーブルやアースケーブルに損傷があると、電気の流れが不安定になり、アークが正常に発生しないことがあります。ケーブルに亀裂や断線がないか確認してください。
● トーチボディ全体を清掃する
トーチボディにスパッタや金属粉、ホコリ汚れが付着していると、絶縁性が低下し、意図しないアークが発生する原因になることがあります。トーチボディ全体を丁寧に清掃してください。
● ノズルの汚れ(スパッタ付着)
ノズルの内側や外側にスパッタが付着していると絶縁性が低下し、母材に接触した際にアークが発生しやすくなります。スパッタ除去剤を使用するか、専用のノズルクリーナーで定期的に清掃しましょう。特に先細りノズルは、ノズルとチップの間にスパッタが溜まりやすく、ノズル部にアークが発生する原因となります。また、ノズルが凹んでいたり、削れて劣化している場合も同様です。このような場合は、新しいノズルへ交換してみてください。
● ノズル取り付け緩み
ノズルの取り付けが緩んでいると、チップとノズルが接触しやすくなり、アークが発生する原因になります。ノズルがしっかりと取り付けられているか確認してください。
● チップ先端がノズルよりも出てしまっている
溶接チップの先端がノズルよりも過度に出ていると、チップが母材に接触しやすくなり、アークが発生する原因になります。チップの突出量が適切か確認し、必要であれば調整してください。
● ノズルが接触しないよう注意しつつ、しばらく溶接してみる
ノズルが母材に接触しないように意識しながら、しばらく溶接を続けてみてください。一時的な電気的な不安定さが解消され、正常に戻ることがあります。
● チップやオリフィスを交換してみる
チップの先端が摩耗していたり、チップの穴が広がってしまっていると、ワイヤの出が不安定になることがあります。新しいチップに交換してみましょう。シールドガス整流のためのオリフィスも割れなどがあれば交換を推奨します。
● インシュレーターを交換
インシュレーターは絶縁筒、絶縁ブッシュとも呼ばれ、電気的絶縁、熱管理、ガス流れの整流、部品の保護といった重要な役割を担っています。溶接トーチ内部の電気回路を保護するために不可欠な部品であり、高電圧を使用する溶接において、ショートや火災を防ぐ役割を果たします。
インシュレーターが劣化していると、絶縁不良を引き起こし、ノズルが母材に接触した際にアークが発生しやすくなる可能性があります。まずはインシュレーターを清掃し、それでも改善しない場合は交換を検討しましょう。
上のはボロボロ、下のは新品。
最後に:メンテナンスと安全への配慮
日頃からのメンテナンスは、予期せぬトラブルを防ぎ、安全な作業環境を維持するために非常に重要です。ノズルの清掃やチップの交換など、定期的なメンテナンスを心がけましょう。
溶接作業は危険を伴う作業です。感電や火災を防ぐため、以下の点に注意してください。
- 濡れた手で溶接機やトーチに触れない。
- 保護具(溶接面、革手袋、マスクなど)を必ず着用する。
- 近くに可燃物のない場所で作業を行う。
上記の確認、対処法を試しても問題が解決しない場合は、溶接機本体の故障も考えられます。お手数ですが、溶接機のメーカーや販売店に相談されることをお勧めします。
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